| 平成12年8月27日（日）、28日（月） | 晴れ |
山梨県道志川 | 尺ヤマメ | 妻、娘、娘の友人Ｍ |
 |
 |
 |
 |
 |
  |
ついに尺ヤマメを射止めた。2000年8月28日早朝のことである。
渓流釣りを始めて以来5ヶ月が経過している。難しいと言われる道志や近場の小渓を中心に責めているので、サイズにはあまりこだわっていなかったが幸運の女神が降り立ったのか。そういえば今日は娘とその友人Ｍがこの渓に同行している。前日。久保の吊り橋近くの渓でキャンプもどきの釣りを楽しんだ。
渓に降りると既に一組のキャンパーたちがいた。われわれは少し離れた火跡のある平らな場所に陣取ることにする。まずはビールで乾杯。残りのビールや焼酎、野菜を渓に浸し、炭を熾す。塩焼き用の塩は充分準備した、後は釣れる魚を待つだけである。妻は既に流れの中で竿を振っている。私もしばし釣りに専念しよう。・・・・・・・・・・
残念ながら午前中の獲物はゼロであったが、青野原の農産物直売所で、ナス、玉ねぎ、シシトウ、新生姜、漬物を、海老名パーキングでは焼きソバと握り飯を仕入れているので、昼食には十分である。ナスと玉ねぎの味噌汁、焦げたシシトウや生焼けの玉ねぎも、なぜかビールにマッチする。地元のリンゴも結構いける。いつもながら釣りの後のビールが美味い。娘もアルコールには親しんでいるが、友人Ｍはさらにその上を行っているとのこと。「いいちこ」をロックで飲んでいる。
午後は娘たちも渓流釣りに挑戦した。装備や道具立てが不十分な上、放したままなので当然の事ながら釣果はないが、樹木に抱かれた清流の音や色あい、時折吹いてくる渓風に何を感じたであろうか。
キャンパーたちが片づけを始めたので、私は少し上流の大きな落ち込みに移動した。ここは以前試しているので大凡のポイントはわかっているが、既に数人の釣り人が行き来しており、ポイントでのアタリがなかなかこない。針にかかったのはチビヤマメ2匹である。妻も釣り落しのみで釣果なし。チビヤマメのうち1匹が針を飲み込んでしまったので、2匹とも塩焼きして食べることにし、ごみを片づけてこの渓を後にした。今日の宿は両国橋の湯川屋。過去何回となく訪れているが、宿泊は初めてである。家の人の親切な対応が心地よい。夕餉は岩魚の塩焼きがメインで、野菜の天ぷら、煮物、野菜蕎麦、漬物などである。岩魚の塩焼きはいつ食べてもうまい。風呂の後の生ビールが五臓六腑にしみわたった。
翌朝。
道志の朝は、陽を山陰にして静寂の中にあり、流れの水音だかげ聞こえていた。肌寒ささえ感じる渓の、その淵は未だ白々としていた。
キジを針にさし、岩陰に身を寄せながらそっと近づき仕掛けを投入する。視認できなかった目印が、流れに押されてかすかに見え始めた、と同時に僅かに沈んだ。聞き合わせすると一気に竿先が撓り、奥へおくへと引込まれる。かなりの手応えがあり、半睡状態の脳に一気に酸素が送り込まれた感がある。この辺りはニジマスもいるが、手応えはニジマスでないことを知らせていた。0.3号のハリスを気にしながら慎重に手繰り寄せるにつれ、淵に獲物の動きの波紋が広がってきた。なおも駆け引きを重ね、獲物を岸辺に寄せてくる。この間どのくらいの時間が経過したのか、数十秒の出来事か、もっと長かったのか、判然としない。玉網に獲物を収める。
初めて見る尺ヤマメは、口が鉤状でサケのようであった。「やはりサケ科なんだな」と納得しつつも、パーマークの美しい魚体とはアンバランスだと思うのは私だけであろうか。3時間弱の釣りを終えて宿に戻ると、娘たちは朝食にありついていた。橋と、その遥か下方の渓の眺望付きの朝食である、食欲が出るのも当たり前。娘の友人Ｍは丼飯のお代わりをしていた。今日はこれから道の駅経由で山中湖へ向かう。
道の駅道志には、地元特産のクレソンを始めとした野菜や漬物、ヤマメの甘露煮、その他土産品などの販売のほか、きんぴらパイやクレソン蕎麦など特色あるものが食べられる。場所柄か、コーヒーも美味く感じる。アイスコーヒーを飲んでいざ山中湖へ。
まずは「酒」の看板のでているコンビニへ。ビール、酎ハイ、食糧の買い出しである。夏休みの終わりを惜しんでいるのであろうか、月曜日にもかかわらずかなり観光客がいる。湖岸の林の中に休憩場所を探していると、先客が去った屋根付き眺望兼休みどころを発見し、コンビニ袋を持った娘が走った。笑いながら3人が付いていく。
座に就きさっそく乾杯。招かざる客（蜂）に虫ペールで応戦しながら飲むビールや、おでんの味もまた格別である。至極の一時が過ぎていく。酔い覚ましに足こぎスワンに乗ってみる。ちょうど4人乗りである。「風が強いのであまり遠くに行かないように」と係りの人。確かに今日は風が強い。そういえば、林の中を吹く風はもう秋の兆しを含んでいた。渓流釣りも残り一月余りとなってしまった。
